メシと映画のK佐藤

フラッグ・デイ 父を想う日のメシと映画のK佐藤のネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

実話を基にした作品との事で題材は凄く良かったのですが、話の組立方で大分損をしている作品であると思いました。

全編凪の様で盛り上がりに欠ける展開と、ジェニファーのジョンに対する愛が余り伝わって来なかった事。
この二つが、本作を個人的にイマイチな印象にしている要因であると考えています。

前者に関しては言葉そのままなのですが、本作は兎にも角にも盛り上がりません。
娯楽作では無いので静かなのは当たり前なのですが、それにしても本作は静か過ぎます。
この内容で起承転結の転が無いのは、ちとしんどい。
冒頭でジョンの運命の行く末を明示させてしまったのは悪手だと思います。
これを終盤に持って来ていれば、転が無い物語にはならなかったのになー…。

後者に関しては、あくまで個人的な印象です。
パンフ掲載のジョン役のショーン・ペンとジェニファー役のディラン・ペンへのインタビューによると、本作は父と娘の愛の物語であるとの事。
それに異論は無い内容であったと思うのですが、どんなにダメ人間であったとしても父を愛すると言うジェニファーの「であったとしても」の部分の描写が本作には足りなかったので、上述の通りジョンに対する愛が自分には伝わって来なかった。
彼女の幼少期には多額の借金を彼女の母親に押し付けて雲隠れして、母親はアル中に。
アル中になった母と離れて彼女と生活する事になった際は、柄の悪そうな連中と連んでトラブルとなり、結局彼女は母親の下へ戻る事に。
母の再婚相手と折り合いが悪くなり彼女が家出して再び頼って来た際は、真面目に働いたのも束の間、銀行強盗をして逮捕される事に。
出所後彼女と再会した際は、高級車を彼女にプレゼント出来る程の報酬を得られる仕事に就いていると言って、簡単にその嘘を彼女に見破られる。
終いには偽札作りの罪で逃亡の末、射殺される。
…ここまでクソだと、普通は愛するどころかジョンは憎しみの対象となるはず。
それでもジェニファーはジョンを愛すると言う。
それが家族だからでしょうと云う意見はご最もなのですが、個人的にはその点も含めて説得力のある「であったとしても」の描写が本作には足りなさ過ぎたと思います。
ジョンに嘘をつかれ続けたが故に、ジェニファーは真実を追求するジャーナリストを志し、実際に優秀なジャーナリストとなります。
個人的にはその方面から話を組み立てて行った方が本作は良かったのてばないかと思いました。

ジョンとジェニファー父子を実際に親子であるショーン・ペン(本作では監督も兼任されています。)とディラン・ペンが演じた事は、本作の数少ない良かったと部分かと。
実際の親子だからこそ、あのジョンとジェニファーの微妙な距離感を表現出来たと思うので。

題材やキャストは良かったのに、話の組立が巧くなかったのが本当に悔やまれます…。