垂直落下式サミング

七子の妖気の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

七子の妖気(2012年製作の映画)
3.5
岐阜県下呂市の温泉街町おこしムービー。
女湯かと思ったら、いきなりおっさんのシャワーシーンで膝カックンをきめてくる。しかし、湯船に浸かり、不穏な気配がしてふと気づくと女の幽霊がっ!ちょっとだけホラーでハッとする。もう少し演出に力を入れて、おっさんの主観のみで怖がらせてほしかったけど…。
お色気ホラーかと思いきや、そういう方向性のストーリーでもないってのが徐々にわかってきて、これが誰に向けられたはなしなのかわかんないまま進んでいくから、だんだん不安になってきた。
上司の愚痴を言い合える女子グループたちは、そこらにいそうな実在感があってとってもよかったんだけど、コイツらが湯船に浸かる妖怪のおっさんたちと酒を酌み交わしながら仲よくなりはじめたとき、このはなしいったいどこへ向かってんだろうと…。先のみえない廃トンネルのなかを、灯りもなしに進んでいくようなドキドキで立ちすくみそうになった。
帰省したお疲れOLよ!妖怪の溜まり場となった実家の温泉宿を救え!疲れを癒すサービスで、やさぐれた妖怪に満足してもらって、お帰り願うお風呂屋さん。プロットは『千と千尋の神隠し』を、そのまんま。
人間界で言えばニート生活な妖怪たち。オバケにゃ学校も試験もなんにもないと言わんばかりに、宴会場で楽しい半裸の乱痴気騒ぎが催されドカンとアガる!ゲロゲロ!ゲロゲロ!レッツゴー!
のぼせそうな長風呂女妖怪の歌う新曲「温泉レディー」は、温泉の新しい旅立を歌っており、自分を強く主張できない主人公と、チンタラ生きてる妖怪と、どちらにも刺さってしまう。ふやけるくらい長風呂して作っただけあって、いいリリシズムだ。
カンフー映画好きの女の子が、お風呂場でアチョー!ひとり暮らしの部屋だとできないことを、実家の浴場で!憑き物が取れたラストの切れ味はよかったな。いいオハナシだったと思う。
ただ、撮影はもうちょい気を遣ってほしい。手持ちカメラ撮影で、やたらガタガタ揺れるのが嫌。実録風ってよりは素人臭さのほうが先にたって、単に観づらい。三脚買って定点でやってくれ。こっちは、こういう安っぽい映画ほど、目の疲れを最小限におさえたいんや。