春巻

弟は僕のヒーローの春巻のレビュー・感想・評価

弟は僕のヒーロー(2019年製作の映画)
4.3
 この映画は井上ひさしの名言「むずかしいことをやさしく,やさしいことをふかく,ふかいことをまじめに,まじめな ことをゆかいに,そしてゆかいなことはあくまでもゆかいに。」を具現化したように思えた。

 日本と違ってインクルーシブ教育の学校で、初めて一人で帰るシーンは「はじめてのおつかい」みたいで家族をハラハラさせたり、自分も去年知った言葉「きょうだい児」の視点から描かれていて、恐らく家族、とりわけ兄にとっては大変なことだろうけど、そこは笑いに昇華させて単なる悲劇に終わらせないイタリア人らしいユーモア溢れる作品でした。

 でも観ていてふと思った。もし家族会議で、反対多数で兄が行きたい高校に行けなかったら、それはそれで本人の希望を詰んでしまうのではないかと。
 アリアンナはスウェーデンの若い環境活動家グレタ・トゥンベリを思い出させるし、ネオナチは日本人が思うよりももっと嫌悪感を生む存在だけど、何よりこの両親が一番良い。 
 
 公開前の日比谷での試写会にも行ったけど、原作者は実際には弟は死んだとは言ってないと言っていたから、あのシーンは映画的に盛ったのだろう。
とにかくお涙頂戴になるところ、大方の予想に反してホッコリさせてくれる作品でした。それでも自分はナチのTシャツのシーンではウルッと来ました。
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