わたぼう

お早よう ニューデジタルリマスターのわたぼうのレビュー・感想・評価

4.9
とある企画上映にて鑑賞。

Blu-rayを持っているけど、映画館で観たかったため、ずっと見ずにいた作品。もっと早く観たかったと後悔するほど、最高だった。

テレビを買ってくれない両親に対して、だんまりストを敢行する兄弟(実と勇)。小津史上一番笑えるし、かわいい。実と勇がとにかく最高だ。

小津映画には毎回?赤いヤカンが登場するが、今作では赤いチェックの布や、編み込んだニット、スキー板などなど、こだわったアイテムがわんさと出てくる。そして部屋の間取りも含め、スタンダードの構図が本当にアーティスティック。

びっくりするほど、洗練された構図やカラーは、ジャック・タチ『ぼくの叔父さん』を思い起こしたけど、ほぼ同年なので、小津は観ていないかも。そうすると、小津は何からインスピレーションを得たのだろうか。モンドリアンとかの絵画からなのかな?

また、今作の黛敏郎の音楽も、ジャック・タチ『ぼくの叔父さん』やトリュフォーの『大人は判ってくれない』のBGMを思い起こした。前者は本作の一年前だし、後者は本作と同年。どちらも観てないんじゃないかなと考えると、この時代の流行りな感じのモダンな音楽だったのかもしれない。

あの長屋と土手は、セットで、大船松竹撮影所の付近(いまはイトーヨーカドーがある)に作ったそうだ。長屋の隙間から見える土手のショットがすごいなと思ったけど、まさか人工的に作ってるとは恐れ入る。さすが。

作中に出てくる「おなら」は当初、映倫がNGを出しており、その回避のため、金菅楽器を使うことになったようだ。小津とプロデューサーが映倫に出向き、これでどうかと交渉したそうだ。子どものと大人と、おそらく楽器が違うのがかわいい。

「お早よう」のタイトルの意味も観るまで分かってなかった。

「お早よう、こんにちは、こんばんは、おやすみ、いい天気ですね」これらは小津映画に欠かせない会話のセリフ(クリシェ)だが、「大人がよくする無駄な会話ですよね」と子どもたちに言わせるとこで、小津の真骨頂であるセリフ回しを自らディスってるのが最高だった。

そして、ラストのホームでの男女(佐田啓ニと久我美子)の会話やりとり。これぞ小津安二郎の映画だと、示されるとともに、やっばりいいなと思わされる。

ラストどこで終わるのか、と思ったら、まさかのショットで終わり、脱帽でした。
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