MasaichiYaguchi

屋根の上に吹く風はのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

屋根の上に吹く風は(2021年製作の映画)
3.6
子育て中の親たちが中心となって2014年に開校した鳥取県智頭町のオルタナティブ教育校・新田サドベリースクールは、子どもたちが自分で考えて判断する力を身につけることを目指している。
だから同校では、学校のルールづくりや全体の運営なども全て子どもたちが携わり、サポート役の大人も「先生」ではなく「スタッフ」という位置づけで子どもたちによって選ばれている。
このドキュメンタリーでは、夫々の個性に応じた柔軟な学び場の実現に向けて葛藤する大人たちと、「やりたいこと」だけでなく「やりたくないこと」への自由をも許容する空間で居場所を見いだしていく子どもたちの姿を映し出していく。
教科書やそれを教える先生のいない同校では、人の嫌がることや迷惑になることをしない限り、一日中ゲームをやっていても良いし、ゴロゴロしていても良い。
このように最初のうちは自由に好き勝手出来て良いと思っていても、何時かは飽きて張り合いがなくなる。
暇をもて余しても大人は助けてくれず、自分でやることを見出ださなくてはならない。
余程難易度が高いことでなければ、或る意味、人に指示されて行動するのは楽で、何故なら自ら考えることなくマニュアル通りにすれば事足りるからだ。
この学校の一年間を追ったドキュメンタリーでは、子どもたちが自ら始めた喫茶店と、田植えから始まり稲刈りで終わる農作業のエピソードが印象的だった。
文科省の枠組みから外れた学校かもしれないが、お仕着せではない、生きる術を学ぶ新田サドベリースクールのような学びの場は、もっとあっても良いと思うし、逆にこのような学校からしかイノベーターは誕生しないような気がする。