デニロ

悦楽のデニロのレビュー・感想・評価

悦楽(1965年製作の映画)
3.0
1965年製作公開。原作山田風太郎。脚色監督大島渚。松竹を退社後創造社を設立。映画製作資金獲得のためテレビドキュメンタリーや、「アジアの曙」という中国の辛亥革命後の反革命政権打倒の革命ドラマを制作。創造社製作の映画作品第1作だと思う。一度観ているのですが忘却の彼方で実に新鮮に観ることができました。

中村賀津雄が野川由美子のからだにオイルを塗りながら言う。/これは誰のもの?/あなたのもの。/このシーンに、ゴダールの『軽蔑』の冒頭シーンだったかを思い出した。ベッドの上で全裸のブリジット・バルドーが/わたしのお尻は好き?おっぱいは好き?太ももは好き?くちびるは好き?目は好き?顔は好き?/云々とベッドを共にしている男に問う。男は、好きだよ、と。

たいていのことは忘れているのにこんなシーンは覚えている。忘却曲線というのは字の如くに曲者だ。将来こんな会話をベッドの中でするんだろうかと高校生は思い、思い続けていたんだろうか。そんな日は遂に訪れないのですが。

中村賀津雄の下に3,000万円の金が転がり込む。公金横領の金だ。横領犯の小沢昭一が中村賀津雄の犯罪をネタに、俺は捕まるだろうが、金はお前に預ける、5年くらいの刑だろうから出所するまでこの場所で保管しておけ、裏切ったらお前の犯罪をバラす。彼はビクビクしながらその金をしまっておくのだが、数年後、彼のおもい人から結婚の招待状が届く。実は彼女のために犯罪を犯し、その犯罪のために彼は逼塞している。馬鹿々々しい。思いなど届くはずのない恋だったけれど、彼女の花嫁姿など見せつけられた日にゃ悪魔のしっぽも疼きだすというものだ。彼は預かった金を使い切って後は野となれ山となれ。

100万円/月の手当てで女をとっかえひっかえ。その他金に任せて豪遊。どうせ一年間の悦楽ですもの、こんな感じで十分と思ってはいたのだが。

金を使い切った頃、おもい人が訪ねてくる。嫁いだ先の化粧品会社が倒産しそうで無心に来たのだ。彼の羽振りの良さをどこからか聞いて来たのです。でも、彼は金を使い切ってしまい彼女を助けることはできません。金の出所と理由を縷々説明するのだが、彼女は彼を詰るだけです。

本作で大島監督は、徹底的な性表現を企図したとのことですが、映倫の審査でかなり押さえつけられてしまったようで、いま記しながら思い返してみても性表現云々で記憶に残ったものがない。企図した性表現は果たせなかったにせよ、有り余る金を持ったら一度は果たしたいと思う妄想を描いて見せてくれている。それがまた砂を噛むようなガランドウのようなものなのだが。

国立映画アーカイブ 没後10年 映画監督 大島渚 にて
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