『赤ちゃんに乾杯！』で後に世界を席巻するコリーヌ・セローの長編劇映画デビュー作。
女ひとり、男ふたりのよくある三角関係ものかと思えばさにあらず。
彼と彼女、彼と彼でお互いに愛しあっているポリアモリーの関係を、とりたてて扇情的にもスノッブにもならず、さらりとスケッチしている所に好感がもてる。

というかサミー・フレイがメガネかけてお裁縫してる絵面だけで満足。
ジャン・ピエール・マスのスコアもお洒落で爽やか。

サミー・フレーは、デルフィーヌ・セイリグのパートナーだったそうだが、本作とかシュミットの作品の存在を知ると、サミー・フレーを軸にした映画史みたいなの見えてくる

スリーサムものが途中からフォーサムになる。
異性愛、同性愛、そして近親相姦まで何でもありの不思議家族物語で、若者が中心とはなっているが、熟年キャラも登場して愛の空気に巻き込まれていく。
風変わりだが淡々として、オーバードラマティックにならない作風だった。

驚くのは、これが70年代後半の作品であること。
アメリカや日本のゲイ映画が、当事者の問題から『新しい家族の在り方への模索』へテーマを広げたのは2000年代なので、20年以上早い。
そう考えると、ナチュラルな作風がより先鋭的に観えてくる。
「さすがフランス…」と唸った。