このレビューはネタバレを含みます
夜に帰ってきた主人公がベランダに干していた洗濯物を取り込んで部屋に座る場面、かなり暗い画面ながら、画面右で揺れるカーテンと少し遠目のカメラ、そして荒木知佳の佇まいが、痛いほど欠落を伝えてくる。
人物を過不足なく収めつつも、極力動きを抑えた飯岡幸子の撮影がまたしても素晴らしい。喪失を抱える主人公を、そっと優しく見守るように俳優から距離を空けた位置に据えられたカメラが、台詞としては表出しない感情を掬い上げる(台所のような狭い空間では間に柵のような木の柱があり、やはり距離を設定される)。