さっちゃんの食べる(生きる)姿を、みんなはそれがまるで信じられない奇跡みたいに記していた。世界のあちこちに哀しみは落ちているけれど、毎日の美しい夕焼けを見逃してしまうみたいに、わたしたちはそれらに気がつけずにいる。風に踊るカーテン。静寂に聴こえる虫や木々や子どもの声。そんな美しいものもすべて。ときに心の声がうるさすぎて。
かれらの哀しみに同調して、わたしもぽろぽろ泣いてしまった。やっと帰ることができて、彼女は前にきっと進んでゆく。ぴかぴかの赤い髪が風と遊んで、夜はゆっくりと、おやすみ。あしたもいい日だよ。
日々の細やかなことがこんなにもいとおしくおもえる、ほんとうに素晴らしい映画だった。繊細な描写と豊饒な余白にうっとりとして、わたしたちの手繰り紡ぐ想いへの信頼と寛容がとても心地よくて、それこそ短歌のようなすべての時間(言葉)が愛おしい映画だった。