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春原さんのうたのchanのレビュー・感想・評価

春原さんのうた(2021年製作の映画)
4.0
ここまで何も語られない作品とは初めて出会ったかもしれない、ある意味で衝撃。希望でも、寄り添うでも、悲哀でもない、いないということはいたということ、何気ない日常の中に、ただ埋められない空白だけが漂っている。風が吹いてカーテンがなびく、風に身を委ねて想いを巡らせる。

「何かあったんだろうな」という登場人物が多くでてくる、その"何か"は語られない、その"何か"に想像を巡らせる。自分の日常が、この映画の地続きのような感覚に陥っている、一日経って余韻が凄い。誰もが抱えているかもしれない埋まらない"何か"を共有してるような心地よさがある。

コロナ禍を描く演出が抜群に効いていて、何気ない人と人との繋がりや、会えない人を想うといったことが、より美しく尊く思えてくるし、凄く"今"の空気感を捉えた作品だとも感じる。ふとした瞬間に、この映画のことを思い返している。
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