ダミアン君に恋してる

戦場のピアニストのダミアン君に恋してるのレビュー・感想・評価

戦場のピアニスト(2002年製作の映画)
4.8
フレデリック・ショパンが39年という短い生涯の中で生み出した作品は全部で240曲。私はその曲たちを全て生演奏で聴いた事がある。

3日間をかけて240曲を全て弾ききるという世界初のピアノリサイタルが行われたのは去年のこと。私の大好きな日本人ピアニスト横山幸雄さんの弾くショパンは格別圧巻で、次元を越え、言葉では到底言い表せないような感動の嵐を呼ぶ。本当に彼の度肝をぬく素晴らしい演奏にはショパンが舞い降りてきているとしか考えられない。
そんな奇跡的な瞬間に立ち会えたことに本当に感激してるし、心から感謝してる。一生モノの宝物だ*☆

本作『戦場のピアニスト』はそんなショパンの祖国ポーランドを舞台に、第二次世界大戦の最中を必死で生き抜く一人のユダヤ人ピアニストの奇跡のストーリーを描く。人間として生まれて来た以上、一度は観ておかないといけない歴史的名作だろう。

銃撃戦と爆撃で焼け落ち荒れ果てた街並みに響くピアノの曲。悲しさの中にも希望のある音色。廃退的な景色の中で愁いを帯びながら演奏される『バラード1番』は本当に美しかった。

ショパンは祖国ポーランドを出てから死ぬまで二度と母国に帰ることが出来なかった。1831年ワルシャワ独立革命の敗北により、彼も異国の地で亡命者となる。この時期に作曲されたのが『革命のエチュード』だ。

ポーランドはいつの時代も戦争の挙句に虐げられてきた。どうしてユダヤ人というだけで目の敵にされなければいけなかったのか…。私には理解が出来ない。

アカデミー賞主演男優賞に輝いたエイドリアン・ブロディさんの演技にはとても説得力があった。音楽家としての繊細さや優美さを携えながら、運命に翻弄され果て幽霊のように彷徨い歩く姿、今にも消えそうな命のともしび。彼が戦争とは無縁のピアニストという職業で無かったら一体どうなっていたのだろう。

「戦争と音楽」の組み合わせが凄く映える。醜いものと美しいもののコントラストが分かりやすく明解だ。そこに揺れ動く、もろく弱い人間の心。

「人間は消えても、音楽は消えない」

そんな儚さが身に染みる作品だったな。

そんな素晴らしい「音楽」こそ人間の手によって生み出され、どの時代も愛され演奏され、何にも代えがたい財産として生き続けていることを私達は決して忘れてはならない。

これから先も、ショパンの精神息づく名曲の数々が人々に幸せを与え、世界が平和でありますように…♡

*☆Keyword*☆
『奇跡のピアニストと華麗なる大ポロネーズ』