土平木艮

くじらびとの土平木艮のネタバレレビュー・内容・結末

くじらびと(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あらすじ…写真家・映画監督である石川梵が、作品の舞台であるラマレラの人々と30年以上かけて信頼関係を築き上げ、2017〜2019年の3年かけて密着し、作り上げたドキュメンタリー作品→ラマファと呼ばれる銛打ち、アタモラと呼ばれる船大工、その家族や村の人達の生活の様子、海と空の美しい風景、厳しい漁の様子が映し出される。


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ドキュメンタリー映画。

もっと、自然と共存する人々を『明るく』『前向きに』捉えた作品だと思ってた。

海が好きなので、『綺麗な海の映像が見られれば良いな』『大きなスクリーンでホエールウォッチングが楽しめれば良いな』程度の気持ちで観に行った。

結果…『どんな世界も甘くないんだな』『"自然を相手"って命懸けなんだな』と感じた。



冒頭と最終盤を中心に『クジラ漁の場面』が描かれる。

でも『真打・クジラ』以外のマンタ漁でも、充分に『命懸け』。
実際に亡くなる人や、過去に生死の境を彷徨うような大怪我をした人も出て来る。
『海・自然の怖さ』を感じさせられる。


ラマファ(銛打ち)に憧れる子供達や、自身の仕事に誇りを持ち伝統を守り続けるアタモラ(船大工)などの、村の人々の様子が映し出される。

一方で、自分自身は『都会でのお金に追われる生活を嫌い村に戻ってきた』けど、幼い息子には『勉強をして町で働いて欲しい』と言う、他の国々でもよく見られる『親の本音』も見られる。


漁の場面の迫力が凄い。
当然だけど、自然の映像はCGを使ったモノではない。海と空の映像が美しい。


今の世の中で『クジラ漁』に否定的な意見も多いんだろう。
でも、産業革命の頃の『鯨油を取るだけで、他の部位は捨ててしまう』やり方と比べると、『無駄もない、規模も小さい、クジラに対する感謝も忘れない』ラマレラ村のクジラ漁は非常に『良心的』と言える気がする。おかしな表現かも知れないけど。
『自然と共存』する意識も有るし、バンバン捕りまくるワケでもないので『持続可能』でもあると思う。ある意味『今どき』でもある。

世界中の『多様な文化の一形態』として、存続して欲しいと思う。…当事者でもないので、無責任な言い方になってしまってるけど。


クジラを解体するところまで映し出していたのが『珍しく』感じられた。TVでは出来なさそうな演出。『生々しい』と言えるくらいだけど、一つの命を食糧として『いただきます』って言うことの意味を改めて考える良いキッカケになった。



とりあえず、雄大な自然の映像を大きなスクリーンで見られただけでも『至福のひととき』だった。
土平木艮

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