sakura

The Son/息子のsakuraのネタバレレビュー・内容・結末

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

愛と、罪悪感。罪悪感と愛。
その区別はすごく難しいと何度も思った。

精神科医の「ご両親の役目ではなく精神科医の仕事です」「愛は力不足」という言葉、作中の人物は救えなかったかもしれないけれど、わたしはすごく救われた気がした。いつかのときのために、ずっと覚えておきたい

しかし、なんだって子どもの前で退院するしないの話するんだろう。同席しなきゃいけない決まりなのかな


今の価値観だと、わりと多くない親が“それ一番アウトでは…”と思うような態度で詰め寄る「普通」に「毎日学校に行くこと」を正義とする父。

最初に、母親と息子が二人で暮らす家を訪れたときの態度を見ていて、さすがにこれはしないな、と思うのだけど、
しばらく後「他の女を愛したのが罪か」と声を荒らげるシーン、これはわたしも思ってしまうかもしれないなと思った。

浮気して家を出たわけではないものの、元夫婦と息子の3人で息子が淹れてくれたコーヒーを飲むシーンとか、あまりの「正しさ」が眩しくて、苦しい。浮気というわかりやすい記号がないとはいえ、離婚は罪か、父親と母親が一緒にいないことは罪か、って思っちゃうもの。他人事と思えたらいいのに。


ヒュー・ジャックマン演じる父親が、折に触れて「誇りに思う」「誇らしい」という言葉を使うのが印象的だった。
わたしが女で子どもも娘なのもあるかもしれないけれど、わたしが母親の誇らしい娘になりたいと思ったこともないし、誇らしい娘になってほしいと思ったこともない。
性別だけで括るのは雑だけれど、少なからず「男らしさ」みたいなジェンダーによる「生きづらさ」が彼らをそうさせてるのか、とかも少し思った。

あとはローラ・ダーン演じる元妻が、ずーーーっと苦しかった。冒頭、夫を奪った女の前で「息子が怖い」と言うの、なんっって屈辱だろう、と、わたし的ピークはここだったかも。
一方で、死をもって一生ヒューの中にいろんな意味で深く存在を刻んだ前妻との息子、その傷を抱えて自分と自分の息子と共に生きようという妻もだいぶきつい。50くらいでバツイチの人と気軽に再婚したいな〜とぼんやり軽率に思ったことがないでもないが、自分との子でない子どもを持つ人と夫婦になる、ってこういうことだよなと冷静になった。


『ファーザー』を2年前?同じ映画館で観てたので、アンソニー・ホプキンスがばちばちに元気そう(?)で安心(?)した。

ニコラス役の彼は、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』の彼を思わせる不穏さの漂わせ方がすごい。

あとエンドロールで、フロリアン・ゼレールっていい人なんだろうなと思った(雑)
主演キャスト専任の運転手とか、各ロケ地でのケータリングシェフとかクレジットしてる監督なかなか見たことない。
“この人と仕事したい”“この人とならやりたい”って思われる人って、こういうところなんだろうな。ちゃんと仕事しようって思った(全然関係のない業種)
sakura

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