HaHa

The Son/息子のHaHaのネタバレレビュー・内容・結末

The Son/息子(2022年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ファーザーがすごく良かったので、録画してみた。簡単なあらすじだけ読んでいたのですが、このお話の決着の付け方として明るい方に向かうか悪い方に向かうかどっちかとすれば、悪い方に向かいそうだなあとずっとハラハラしながら見ていました。
今、日本だと、不登校気味の子どもには無理に学校に行かせないのがだんだん当たり前になりつつある気がするんだけど、アメリカはそうでもないのかな。アメリカの特にエリート層の男性はマッチョイズムが強いと言うから、エリートであるピーターはこう言う態度にならざるを得なかったのかもしれない。
ケイトもピーターも息子を愛しているのはすごくわかるけれど、二人とも腫れ物扱いで、きちんとニコラスに向かい合おうとしないのがヒシヒシと伝わってきて辛かった。
病院で、結局医師の説明よりも息子の哀願にしたがってしまったのは、上辺の愛情に囚われて、息子が抱える深刻な状態に真っ直ぐに向き合えなかったから。本当に辛いのは、今目の前で連れて帰ってと懇願する息子の信頼を裏切ることではなくて、息子の死だ。
ニコラスが語った言葉から、ニコラスには少なからず精神病院に入院するということに差別的な抵抗があったのだろう。自分は確かに不調だが、精神病院に入れられるほどでは無い。自分はここにいる多くの患者よりもまともだ、と。そしてその価値観はピーターにもケイトにもあったのだろうと思う。
ファーザーが認知症という病を映画的に見せてくれたように、この作品では鬱という病を映画的に見せてくれる。本人の語る辛さ、しんどさは目に見えないものだし、周りの人間からは理解し難いものだけれど、本人にとってはとても深刻で、死に至る病なのだと。周りの人間は簡単にその辛さを言葉にして説明しろと言うけれど、本人にだって説明できないものである事。その状態にある患者に振り回される周囲の人間も辛いけれど、認知症と違うところは不可逆的に進む病ではないということ。周りが理解し、的確な治療を受けられれば回復できる病。
この映画のラストは悲劇的で救いがない。だからこそ、観客にこの病の恐ろしさを訴え、理解を促しているのだろう。
ラストにガブリエルに捧ぐとあったのでググってみたら、監督の義理の息子さんがこの病だったそうですね。この息子さん、フランス人インターンとして作品に出演されているそうで、この重い物語の一筋の光だなと思いました。
HaHa

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