原作既読。
ここまで俳優の持ってる演技力を最大限に映し出す李監督にまずはあっぱれと言いたい。
レビューでも出演者の演技力が高評価だったので、どれぐらいすごいのかなとハードルは上げて見たが、想像の上を行っていた。
映像も音楽も秀逸で、原作は文章だけなので、どこか淡々と脳内で想像することしか出来なかったが、それを極上に映像化していると思う。
泣いた。
2時間半にまとめるため、どうしても描ききれない部分(更紗の両親との生活)や話を変える部分はあるが、不自然にならないように描ききっていた。
時に監督や脚本家は、彼ら自身の「私はすごいんだ」という自己顕示欲のためや、タレント事務所の忖度から、原作の良さを潰して、利己的に映像化、実写化してしまう作品も少なくない中、李監督は原作の持つ魅力を最大限に出し、脚本も凪良ゆう氏の文章表現を十分理解し讃えているのが分かる作品だった。
原作ファンからすると、この文章だけは削らないでと思う文章があるのだが、原作者の良さをそのまま俳優に語らせている。1箇所を除いて原作ファンの期待を裏切らなかった。(その1箇所は後でネタバレで書く)
2時間半は少し長いと感じたが、これほど美しく原作を讃えて作られた作品に感無量。
日本アカデミー賞候補になるのではと思う。
それだけ映像もメインキャスト4人も素晴らしかった。
広瀬すずさん、本当にすごかった✨
ただ、原作を読んでないと分かりにくい部分もあったので、ここからは、ネタバレで、原作からの補足+彼らのその後を書く↓
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1)雨が降った公園で文が更紗に声をかけた時は、すでに何度も同じ公園で二人は無言で距離を取って過ごしていた経緯があっての、声がけ。二人は無言だったけど、お互いをすでに前から認識してた。
2)ハムエッグにケチャップをかけたり、ピザを食べるとか、文はそれまでの人生で、家族が厳格、いわゆる母親が意識高い系で、やったことがなかった。(炭酸飲料も飲んだことがなかった)いつも親の理想のいい子でいなければならない家庭だった。だからあのシーンは文がどれだけ更紗で癒され、嬉しかったのかが分かる場面。
3)アンティークショップでオーナーが更紗にバカラのグラスを渡したが、あれは買ったのではなく、オーナーが店を閉めるので、更紗に上げたもの。買ったのか上げたのかの描写がちょっと弱いと思ったので、一応書いておく。
4)亮は母親に置いていかれた(捨てられたと思ってる)過去があるため、行く当てがない女性ばかりに執着し、捨てられるトラウマが暴力に走らせていた。映画では亮の過去をしっかり描写すべきだったのではとは思う。
5)バイト先の子供を預かって、また文が誘拐したのかと誤解を受けるが、(参考人として任意だった)子供の母親に警察が連絡を取って、更紗に預かって貰っていて、更紗が文に留守番を頼んでいたことが確認出来たので、文の容疑も晴れたということ。
6)1箇所だけ、削って欲しくなかった更紗のセリフがある。
原作ではこうである:
更紗が警察に拘束されて(映画では亮のナイフの傷についての事情聴取の時)、子供を文に預けていることも調べられ、当時を知ってる警察官に「なぜ犯罪者に預けたのか。そして、あなたは被害者で今だに苦しんでる」的なことを言われ、そこでハッキリ更紗が「わいせつ行為をしたのは文ではなく、伯母の息子です」と言った所。ここはどうしても入れて欲しかった。更紗も大人になり言えなかったことをやっと言えた瞬間で、そこで何かもっと彼女の中で吹っ切れたものがあったように感じて、とても大切なセリフだったと思うから。
7)その後の二人。
二人でお店を持って、また過去の事件をぶり返されその土地で暮らせなくなってを繰り返し、今は長崎で落ち着いている。でもまたいつそこでもバレるか分からないけれど、更紗と文はずっと一緒でこの先も過ごしていく。
なので、最後は二人にとって明るい未来があり、バイト先の子供で更紗達に預けられた子も中学生になって、将来は長崎で彼らのお店でバイトしたいと思ってることも分かる。