こうみ大夫

流浪の月のこうみ大夫のネタバレレビュー・内容・結末

流浪の月(2022年製作の映画)
4.9

このレビューはネタバレを含みます

文句なしです、ホン・ギョンピョ。撮影照明が伏線を物語ってるなんて流石としか言えない。そして相変わらずこの人は自然を撮るのが上手い。フラガールのイメージが強い李相日だが、悪とは何か的なテーマで撮る度にどんどん鋭くなっていて好感。
テレビでやっていたヤンキーについての考察で、「元々複雑な環境に生まれ育ち、初めて受け入れてもらえた場所がたまたまヤンキーの場所だった。世間からなぜ不条理な上下関係と不良行為を受け入れられるのかと問われれば、何故この環境を捨ててまでまた一から人間関係を築かなければいけないのか、と答えるだろう」とあり、その感覚に近いのかもしれない。どちらかといえばカルト脱会に近いテーマだが、カンヌなどが万引きナントカやケン・ローチ云々で語ってくるいわゆる「貧困」に対して、こちらのテーマは同情が得にくい。松坂桃李と広瀬すずだから受け入れられるが、現実でこれだったらやはりダメだろうし、文がこの女の子に手を出さない保証など無い。社会的信用というのは民主主義国家では避けて通れないテーマで、映画は非常識を常識のように描いているに過ぎない。だがそれが映画なのではないだろうか。MeeTooでキム・ギドクは消されたし、消されるべき行為をした人間である。だが、だからといって彼の映画は「非常識」で括られて終わり、なんだろうか。ヘンタイの作った映画はヘンタイだね、と括られればそれまでだ。映画は非常識を描け。現場は常識であれ。もっともっと鋭利でいけ、李相日。
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