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流浪の月のmのレビュー・感想・評価

流浪の月(2022年製作の映画)
5.0
闇も光も深く深く刻みこまれた、濃厚な波が何度も何度も押し寄せてきて、のまれながらひたすら泣いてしまった…
綺麗だった。特に2人で寄り添って徳用の大きなカップのバニラアイスを食べているシーン 文の声で引かれるポーの詩と相まって、美しい、という言葉以外いらない美しさで満ちていた。
演技が凄まじかった…それぞれがまた一つ向こうの場所にたどり着いていた気がする。
印象的なところだと、広瀬すずが亮くんの親戚の子に心配されて言った「大丈夫です」が更紗のいろんな部分を滲ませていてさり気なくも半端ないし、横浜流星は中瀬亮を更紗を苦しめる悪役で終始させず一人の苦悩ある人間として体現していたり、白鳥玉季ちゃんは幼少期の更紗そのもので、ふみいいいと叫ぶシーンなどああこれだと思ったこととか、そして松坂桃李は文だ…ってすとんと心にくるほど凄くて、ひとりの表現者として尊敬している…原作で「黒い目」と表現された文の目が、まさにその言葉通りの悲しみを写していていた 文の声で再生されるポーの詩集から引かれた詩と、蜃気楼みたいな映像
文が、更紗がcalicoに来るようになっても、忘れたいふりをして接客をすることに努めていても、コーヒーを運ぶ手が震えてしまっているシーンが秀逸…心情の複雑さを繊細な動きで表現しつくすなんて…
原作もとても心震えるものだったけれど、色彩をもって、実物で語られると生きているうちに出会えるか否かって感じの芸術性があってただただ観てよかったという気持ち…。
人は自分の見たいようにしかものごとをみないのかもしれない
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