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ミラベルと魔法だらけの家のnetfilmsのレビュー・感想・評価

ミラベルと魔法だらけの家(2021年製作の映画)
3.5
 今回の舞台は南米コロンビアの奥地にある魔法の力を持つ自然豊かな由緒正しき不思議な家だ。ここに暮らすマドリガル家はおばあちゃんの頃から代々、神様から子供たちに魔法のギフトがプレゼントされる。家族はいとこを含め、全員が魔法の力をプレゼントされる中、ミラベルだけに魔法のギフトが渡されない。親戚一同みんなが特別な魔法の力に恵まれる中、持たざる者としてのヒロインの姿が哀感を持って描かれるが、彼女自身はそれにへこたれることなく、明るく胸を張り、高らかに歌を歌う姿が印象的だ。いったい誰がいとこで誰が姉なのかはっきりしないのが映画としては玉に瑕だが、ミラベルの年上の姉のイサベラは長い髪に印象的な美しい顔を持ち、いつも美しいドレスを着ていてみんなの注目の的だが、対するミラベルは眼鏡にウェーブ・ヘアの地味な女の子だ。

 映画はこの不思議な家からどこかへ向かって冒険の旅に出る物語ではなく、ミラベルを中心とした大家族の物語で、彼女は専ら少し古びた大豪邸の中を行き来するだけだ。それでもお転婆な彼女はある目的があって、祖母や姉たちの目を盗み、彼女なりの勇気を持った冒険の旅に出る。姉妹の確執や放蕩息子の帰還など、映画はジャンル映画としての大家族モノの構造をなぞる。弱肉強食の世界に生きる女系家族では常に祖母のアルマおばあちゃんの言いつけが絶対で、途中オオカミ少年ならぬオオカミ少女となる彼女を待ち受ける大きな運命にミラベルは立ち向かう。持たざる者もみな、みんながみんなそれぞれに魅力的な何かを有している。現実よりも先んじてダイバーシティ化がほぼ完了しているディズニー映画は世界中の全ての人々に受け入れられる良作なのだが、果たしてビッグ・ファミリーものが現代に広く受けいられるか否かは別の次元の話だ。姉妹の諍いを無理に収束させるなど強引な演出も目立つ最新作はもはや、ヒロインを守る強いヒーローの不在が続く。大人が色々と裏読みするための余白もしっかり利かせてある。
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