FBIモスクワに潜入せよのyabaioriのレビュー・感想・評価

『スプリングフィールド銃』や『無法の拳銃』等、ド・トスの傑作は異なる集団間の駆け引きと身分を偽っての潜入、突発する暴力を描く点でスパイ映画としての性格をそなえていたが、本作はまさに冷戦期のスパイを題材としている。
残念ながら本作は両作ほどには楽しめなかったが、最大の原因は本作が反共イデオロギーの前景化によりいささか教条的な雰囲気をまとってしまったことにあるだろう。『スプリングフィールド銃』の息子による父の批判の痛々しさに比べて、本作の父による息子への説教は文字通り説教臭い印象がぬぐえない。