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ジキル博士の二つの顔のyabaioriのレビュー・感想・評価

ジキル博士の二つの顔(1960年製作の映画)
3.5
鑑賞前にはどうせ主人公が怪物に変身して暴れる話だろうと見当をつけていたが、本作で主人公が変身するハイド氏は――過去の同原作の映画化とも、『吸血狼男』のような他のハマー作品での変身とも異なり――若々しいイケメンである。しかし単に暴れまわるだけの怪物ではない存在が中心に据えられ、また博士の妻の設定(不倫)によるメロドラマ的要素が導入されたことで、本作はかえってホラーとしての強度を増しているようにも見える。一言で言って、本作のハイドはハマーの怪物のほとんどよりも怖い。
なお、同じフィッシャー監督の作品として『複製人間の恋』を参照することもできるかもしれない。Four Sided Triangleの原題を有するこの作品では三角関係(Triangle)の一項が科学実験を通じて二重化されるのだったが、本作The Two Faces of Dr. Jekyllの場合は三角関係の一項をなす博士が科学実験を通じて二重化される(Two Facesとなる)ことで彼の元々そなえていたアンビヴァレンスが顕在化するのである。複製や変身といったSF-ホラー的主題がメロドラマ的葛藤とも不可分であること。
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