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私ときどきレッサーパンダのFumiのレビュー・感想・評価

私ときどきレッサーパンダ(2022年製作の映画)
3.5

さすがピクサー映画という映像の綺麗さとテンポの良さ、何より主人公とレッサーパンダがとても可愛らしい。ただ、後半の描写に少しだけモヤモヤして4.0以上のつもりが少しだけ低めのスコアになってしまった。

前半はとても良く、これまではタブーだったのかあまりはっきりと描写されることのなかった子供から大人になる思春期の体や心の変化、それに伴う子供と親の葛藤が、まったく湿っぽくなく、爽やかにコミカルに、かつ割とリアルに描かれていたところが良かった。

特に良かった点は、主人公本人だけでなく、親もまたかつては同じように悩んだ子供だったという描写があったこと。親にとっても子離れは大変なことをしっかり描けていたと感じてよかった。子供にはいつまでも子供でいてほしいと思ってしまう親心との向き合いかたまで掘り下げられていた。親にとっても子供にとっても、自分の人生を生きるという選択は、本来とても難しいのかもしれない。

推し活の部分はシンプルにいいよなぁと思うと同時に自分や周りが見えなくなる危険性も少し描いている気がして、手放しに推し活最高、にしなかった点は好感が持てた。


以下ネタバレあり



最後のまとめかたに少しモヤモヤが残るものはあり、最終的に自分で自分らしく生きていくこと、パンダを消さないことを選んだのに、レッサーパンダが寺の広告塔になってお金にされる描写は良いのかどうかちょっと気になった。もっと自分のために生かして欲しかった気もするが、伝統や家族を否定せず、自分自身の人生と家族の絆を共存させていくという意味が込められているのであれば良い気はする。

13歳の子供たちを生き生きと夢のある未来が示唆されて描かれていたことにまず意味があったと感じた。私もあの複雑な年齢の時に、あんな手放しで味方になったくれる分かり合える友達がいたらよかったのにな、と思ってしまった。それに少なからず友達や自分より親の意見を優先させてきた経験がやはり自分にもあるので、共感ポイントも多かった。特に、未来ある子供たちには自分の人生をどんどん切り拓いてほしいと勝手に願ってしまった(この発言に年齢を感じてしまうが笑)。

そして母親役の声、もしかして?と思ったらやっぱりサンドラ・オーだった。やっぱり上手いなー。

毒親がきつい、という意見もあるようだが、特にこの作品の時代である2000年代ぐらいまでは日本を含むアジア系は宗教観的に親を含む目上の人を敬うべきという刷り込みが少なからずあるので、あのぐらい大袈裟な描き方をしたのかなと思い自分はあまり気にならなかった。が、何かしらそういうトラウマがある人にはちょっときついかもしれない。
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