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ブルー・バイユーのhorryのネタバレレビュー・内容・結末

ブルー・バイユー(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

韓国からアメリカへの国際養子と、養子縁組した子どもたちが法の隙間に入ってしまい、30年以上アメリカで暮らしたにも関わらず韓国に強制送還されてしまう――という、現実に生じている問題を取り上げた作品。
この問題は、韓国映画やドラマではしばしば取り上げられていて、たとえばドラマ「ムーブ・トゥ・ヘブン」では、強制送還となった人が韓国に着いてからのエピソード回があった。送還された男性は、見た目は韓国人であっても英語しか話せないので仕事に就けない、韓国の文化に馴染んでいない、知り合いも身寄りもない、というあまりに酷い状況で亡くなってしまったことを取り上げ、その責任は韓国にある、というストーリー展開になっていた。
先日みた映画『孤独なツバメたち』では、日本にデカセギに来ている日系ブラジル人の青年たちが、日系3世にあたる親がブラジルに帰国すると4世も帰国しなければならない(日本で生まれ育っていても)ことが取り上げられていた。

国があり、国境というものがあり、何らかの線引きが必要で、そのために法が設けられているのだけど、人が生き、暮らしてきた現実をすべて捨てさせるようなやり方は暴力と表現してもよいと思う。

本作はそうした重要なテーマを描いた作品なのだけど、映画としては、人の心を震わせることにウエイトがかかり過ぎていたと思う。
何度も挿入されるアントニオの実母のイメージ映像、あまりに頻繁なアントニオの顔のアップ、唐突に歌われるロイ・オービソンの『ブルー・バイユー』、手ぶれのままのカメラ、別れのシーンでの子ども叫びと抱擁、ロマンティックで詩的な風景で締められるエピソードなど、すべてが観客の情感に訴えるもので、過剰に感じた。

一方、アントニオはレイシズムに直面しているのだけど、その背景は描かれない。レイシズムは語られていないが、アントニオが起こす事件や前科は取り上げられ、アントニオのどうしようにもない選択も、個人的な事情として描かれる。社会的に弱い立場にある人だからこそ、苦し紛れの選択をしなければならなかった。この「社会」という部分の描写が薄いのではないか、と思った。
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