MasaichiYaguchi

Dear MoonのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

Dear Moon(2020年製作の映画)
3.3
2021年の中秋の名月は9月21日。
中秋の名月は農業の行事と結びつき「芋名月」と呼ばれることもあり、名月を愛でる習慣は、平安時代に中国から伝わったと言われている。
今年の中秋の名月は満月とのことで、晴れていれば、美しい月を楽しむことが出来ると思う。
「アイコ十六歳」で商業映画デビューを果たし、少女の素顔を切り取った映画を数多く発表してきた今関あきよし監督は、21世紀に入ってからは海外での映画撮影に拘っていたと思うが、コロナ禍で海外での撮影が困難な昨今、原点回帰とも言えるようなショート・フィルムを新たな取り組みとしたような気がする。
物語はコロナ禍の不安や焦燥、閉塞感を感じる日々を送る人々が、その闇を忘れさせてくれるミステリアスな少女と出会い、一時過ごしたものの、いつの間にか少女の不在に気付き、喪失感に駆られてさ迷う様を、時に切なく、時に幻想的に描いていく。
本作は竹取物語を下敷きにしているが、それを月夜に照らされたような映像、クラシカルな音楽、詩のような台詞で彩っている。
ヒロインにしてキーパーソンである少女を演じた石井そらさんが本作について、こうコメントしている。
「いつ無くなるか分からないこの日常。この一瞬一瞬を大切に生きていきたいと思います。今こんな世の中だからこそ皆で同じ月を見上げて心を一つにしたい!」
映像詩のような本作は、このコメントにあるようにコロナ禍を生きる我々にエールを送っていると思う。