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ジェーンとシャルロットのSPNminacoのレビュー・感想・評価

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)
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「ママを見るための口実」として撮影するシャルロット、見られるジェーン。2人の間には微妙な距離感があって、撮影を通じて母娘の関係を再構築していくようだった。
なにしろジェーンとシャルロットは伝説みたいな非凡な存在。セルジュと暮らした家(記念館っぽくなってる)を訪ねる場面は圧巻だった。歴史上の人物がポンペイように生々しく保存された遺跡を直に歩き、生活感と美意識の詰まったタイムカプセルを開ける。そんな瞬間はなかなかない。なんだろう…例えるならポールとリンゴがタイムトラベルしてアビーロードスタジオに現れたみたいな?
同時に、老いた母と娘の親密で貴重な時間は2人に限ったものじゃない。外見の変化に失望を隠さず、少女のように無防備なジェーン。娘ジョーを連れてそんな母をそっと見守るシャルロット。3世代に重なる面影、パリ、海辺の家、NY(と日本)への旅。母であり娘である女同士は不安や愛、家族の思い出と喪失を共に辿っていく。
背景説明は殆どないので、ドキュメンタリーよりプライベートフィルムに近い。カメラを介して今だから聞ける、言える、2人だけの優しくて儚い言葉のキャッチボール。もっと知りたい、もっと愛されたいって、ありふれた思いが切なかった。
ジェーンとシャルロットの会話する声、デュエットする歌声は似てるけど違う。2人はハーモニーでなく別々のユニゾン。けど、ハグするシルエットが溶け合って一心同体みたいに見える。それにしてもセルジュの曲、メロディがなんて美しいの。
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