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ジェーンとシャルロットのshimaluckyのレビュー・感想・評価

ジェーンとシャルロット(2021年製作の映画)
4.3
鎌倉の長谷寺のシーンから始まるドキュメンタリー「ジェーン・バイ・シャルロット」。地元では誰でもが分かる景色だ。親日家と知られる「ジェーン・バーキン」と娘「シャルロット・ゲンズブール」の絆と人生を静かにカメラが捉えていく。本作は、女優としても活躍するシャルロット・ゲンズブールの監督デビュー作だ。

人生の終盤に来ている伝説的歌手であり女優のジェーン・バーキン。彼女の人生の締めくくりと母娘の心の機敏が、静かに描き出されている。

ジェーンによると、シャルロットは他の娘たちと少しばかり違ったという。他の姉妹たち(ケイト・バリーやルー・ドゥアヨン)もそれぞれの分野でそれなりに名を残しているが、母からみてどのように異なるのだろうか。

彼女は母との関係を、より内省的で芸術的な視点から捉え、時に不器用でありながらも誠実に向き合おうとする姿勢が印象的だ。

長女 ケイト・バリーの墜落死についても少し触れている。二人とも身内の死について避けることはできない。シャルロット・ゲンスブールのファンを自負する私は、あまりのダメージでパリを離れNYに移り住んだことも知っているし、それによりジェーン・バーキンの心の傷も想像できていた。


人生とは、「酸いも甘いも」。
全てがジェーンの顔の皺に刻み込まれ、彼女の目に宿る哀しみと希望の混ざり合った光は、言葉以上に雄弁に彼女の心情を物語る。シャルロットは、カメラを通してその瞬間を捉えながら、自身も娘として、アーティストとして成長していく。

本作は、一種、ある女性の「終活」の一部を切り取って、人生において何が本当に大切なのかを静かに問いかける。これは、ある「ジェーン・バーキン」というアイコンの物語だが、誰にもある光景でもある。私も「母の終活」に付き合った時の感情とシンクロし、静かに涙が流れてきた。
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