尿道流れ者

ブレードランナー ファイナル・カットの尿道流れ者のレビュー・感想・評価

3.5
「アンドロイドは電気羊の夢をみるか」というこれ以上ないほどカッコ良く、若干めんどくさいタイトルの小説を映画化した作品。原作を読んだのは高校生の頃、授業そっちのけで読んでいた。近未来の社会や造形を想像し、気持ち悪い顔でニヤついていたのではないかと思う。
映像となることで小説の持つイメージが色あせることはなく、日本語や中国語がアクセントとなる美術はとても面白い。近未来と東アジアが融合した風景はFF7のよう。

素晴らしく作りこまれた世界で間違いなく面白いストーリーが展開されているのだが、どこか物足りない。原作と比べハードボイルドに偏った演出のせいか無機質さが目立ち過ぎる。小説を読んだときに思わず流した涙は映画では流れなかった。しかし、人間と人造人間の境目の曖昧さやそこからくる危険性は映像でも健在で哀愁こそ薄れるものの、SF的なイメージでは群を抜いて素晴らしい。血が沸くほどではないが、とても面白い。