ペンギン侍

最後の決闘裁判のペンギン侍のネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

レイプされたと正直に話すことは困難な時代。レイプされても黙っていたほうが賢明とされる時代にマグリットは告発した。その凛々しい勇気の映画…みたいなふれ込みを知っていて鑑賞したが、全然違った。地獄だった。家の中にも敵がいた。

レイプと告白した後、「上書きしてやる」とカルージュがベルトをカチャカチャ、「Come!(ベッドに来い!)」と言われて従うしかないマグリットを見ていられなかった。「私も過去にレイプされたけど黙っていたわ」という姑。「ル・グリのことハンサムだって言ってたよね?」と裁判官にチクるかつての親友。その裁判ではセカンドレイプ以外の何者でもない質問をひたすらに浴びせられるマグリット。なんなんだ?女ってなんだったんだ?

決闘裁判も結局は夫カルージュの自己顕示欲を示す自己満のものでしかないように見えた。それもきつかった。勝って力を誇示することだけが、彼にとって重要で、本当に妻の無実を証明して彼女の名誉を回復するつもりはあったのかな。全然ただのMetoo映画なんかじゃなかった。こわい。

ラストの凱旋中、笑顔の夫カルージュとは対照的に戸惑うようなマグリットの表情が印象的だった。彼女の浅くて早い呼吸がずっと聞こえていたのもメッセージだと思った。

この子も夫のような男権社会に飲まれていくのかしら。最後のマグリットの表情はそんなことを思ってるように見えた。でも、そんなこと考えたって答えは出ないし、改善しようと動いたとしても何もできないのはわかってるから、心にモヤモヤを抱えたまま、そのモヤモヤを忘れずに、息子を愛することしかできないんだろう。悔しかった。こわかった。

「昔はやばかったんだねー」って映画ではない。2021年の今の我々にも通ずる何かがある。
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