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最後の決闘裁判のogoのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.2
原題は『The Last Duel』

邦題と予告編から劇場で観る程ではないかなーと思っていたら早々にDisney+で配信開始されたので鑑賞。

まず言っておきたいのは、邦題が!壮大に!残念!

集客目線で改変されたり、作品の本質をよりローカルに伝える為に改変されたり…は多少なりとも理解できるのだけれど『最後の決闘裁判』て。とても作品を鑑賞してつけられたとは思えない完全なるミスリード、もしくは不理解、もしくは単純にセンスが無い。

リドリー・スコット監督作なのに日本では興行がイマイチ振るわなかったのは、この何とも野暮ったい邦題のせいだと思う。

原題なら、歴史的に最後の…という意味合いもあれば、物語が行きつく先の最後の…という余韻も感じさせるし、何より劇中繰り広げられる登場人物それぞれの対立から迎える終焉をも感じさせる。「裁判」なんて付いたせいで、歴史物の法廷闘争かと思ったよ。

実態は、中世を舞台にしながら、今なお解決されない(永遠にかもしれない)他者や貧富や産まれやジェンダーの隔絶を描いた作品。

予想を超える重厚さと、中世を舞台にしながらも現代的な視点を織り込んだ複数視点の章立て構成、絡み合った先の帰結と、リドリー・スコットここにありといった作品。

プロットとしては、とてもシンブル。ラスト直前から始まっての、一章~三章でそれぞれの視点の物語を描き、再びラストに戻るという構成。

だけれど、序盤と終盤のこちらの心持ちの格差たるや。。

登場人物各人の視点で観れば、それぞれ納得感のある流れに視えるものの、別の視点からでは恐ろしい程に違って視える怖さ。言葉も振る舞いも、ベースは同じはずなのに全く違った印象。結局、人は自分が視たいものしか視ていない。世界を濾過し、そこに残った自分に心地良いモノ、印象的なモノ、それを信念と言うならそうかもしれない、そうしたモノだけを留めて生きる。

ラストに舞い戻った決闘シーンと、その後の展開は、ハッピーエンドに擬態した究極のバッドエンド。

三者三様の登場人物に、誰か推しを作ると喧嘩になるので、人も世も諸行無常ですなーと、神の目線から達観した気持ちで一緒に絶望するのが吉。
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