はなかすちゃん

最後の決闘裁判のはなかすちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

起きてることは同じなのに、ディテールが違うだけでこんなにも「真実」が変わってしまうのかという見せ方がめちゃくちゃうまくて素晴らしい。
彼女の真実の章のときだけ”truth”が残る演出とかも最高だよな・・・
彼女の真実の章は本当にあまりに酷くて、映画みて悔し泣きしたのなんて初めてかもしれない。法廷のシーンとか耳を疑うような発言オンパレードで、無意識に舌打ちしてしまっていた。自宅で見てよかった。
世継ぎと持参金のことしか考えていない夫と、嫌よ嫌よも好きのうちと勘違いする色欲アホ男、結局それぞれのプライドと名前をかけた戦いであって、実はどちらも実際彼女のことなんてなんとも思っていないというのが辛すぎる。各々の事実の章でめちゃくちゃ自分に都合よく記憶が改ざんされていて恐ろしい。全ての場面における全ての言葉がまじで清々しいほどに最低で、最低男の発言辞典でも作れそうなくらいに酷かった。
そしてあの意地悪な義母の言葉にも辛さが滲むところというか、それで何を得たんですかという質問に対して「生きている」という回答のすごさよ。彼女もまた被害者だったんだろうけど、それは真実をいう人を責めていいことにはならないよな。友人にすら味方をしてもらえない彼女ひとりの戦いが辛い。
決して遠い過去の出来事、史実を見ているだけ、という気にさせないところが見事。
最後の少し大きくなった息子の髪の毛がブロンドだったのは、せめてもの救いなんだろうか。最後の、何の思いも読み取れない、ガラス玉みたいに何も映していないように見える彼女の瞳が本当に悲しかった。
「彼女は二度と再婚しなかった」という字幕が出たとき「そりゃそうだ!」と声に出ていた。

21-71