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最後の決闘裁判のd3のレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.0
世間には真実と社会的認識がかけ離れた事象は珍しくない。
たとえ尊敬できない非道徳的な行為を繰り返す上司や取引先がいたとしても、多くの人は「間違っている」などと声を上げず、陰口をたたきながらも「立場のある人だから」と容認するのではないだろうか。

妻が元親友に犯されたと訴えたものの、加害行為を否認される。看過できることではない。
生死を賭けて決闘し、勝ったものは神に認められた証拠とする。ずいぶんと乱暴な裁定であるが、当時は認められていたというのだから、社会システムを変えることのできない一市民たる我々も、それを野蛮だと嗤うことはできない。

決闘裁判で何が決まるのか。
定まったのは体裁だけだ。しかし体裁こそが重要視されるのも社会である。
“もしカルージュが負けていれば”、の世界も我々は容易に想像できる。夫妻は嘘をついて長官様を陥れようとした悪人として語り継がれるだろう。なかには「本当に暴行されたのに可哀想な人たちだった」という人たちもいるかもしれない。しかし小さな声はいずれ歴史のなかに埋もれてしまう。

勝たなければ意味はない、勝ったとしても得るものはない。社会のなかで立場を築いていくことの厳しさは、中世も現代も変わらないのかもしれない。
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