花熊

最後の決闘裁判の花熊のネタバレレビュー・内容・結末

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

満を持して見たが良かった。

カルージュが想像していたよりも悪い人間としては描かれていなかったのがまず良かった。当たり前っちゃ当たり前なのだが、個人的資質の問題より社会全体に批判的視点を向ける堅実な作りだと思った。マルグリットと現代の鑑賞者視点では、騎士社会における面子を優先してマルグリットの心身を犠牲にした男には違いないし、私個人的としても、けったくそ悪いわぁとは思ったが…。しかし、中世人から見ればそれも騎士道を重んじる善き男に映るだろうし、第1章の自己認識のカルージュも(多少のナルシズムはあるだろうけど)中世という時代の中では真実なのかもしれない。
マルグリットはカルージュが立派な騎士として大衆に迎え入れられたのを見て、これが中世的正しさなのだと改めて突きつけられて呆然としてしまう。マルグリットの感情は、カルージュに対する怒りと失望から、社会への諦観に収束していく。

カルージュ目線からは騎士道物語のように、ル・グリ目線からは中世ロマンスのように語られていたストーリーが、マルグリット目線から生きた人間の証言として語られることで、より我々の現実に近接する話として受け入れられるようにもなっていた。マルグリットの身に起きたことは今もどこかで起きていることだよね、と感じさせられるというか。
マルグリットと友達が、「ル・グリ性格は悪いけどイケメンだわ〜性格悪いけど笑」みたいな会話してるシーンなど女同士のリアルを描いていて笑えるのだが、こういう細かなあるある描写が後々効いてくる。

王妃と伯爵夫人が夫を非難するような目を向けてるのも緩く女性の連帯を描いていて良かった。女友達に裏切られるだけだと、女の敵は女のような話になりかねないから…。これをきっかけに王妃の心は王から離れたのかも、と想像の余地があり面白かった。
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