yuta

最後の決闘裁判のyutaのレビュー・感想・評価

最後の決闘裁判(2021年製作の映画)
4.2
リドリー・スコット作品の中ではグラディエーターに並んで刺さった作品。
凌辱を巡る決闘裁判に至るまでの経緯をジャン、マルグリッド、ル・グリの3人の視点から描く構成と脚本が何よりも良かった。
3つに分かれた章のそれぞれのタイトルが、The Truth According to〜の形になっていて、各章内で描かれるのはTruthであってFactではない。一つの事件に関する3人の主観で捉えられたそれぞれのTruthであるのが面白い。
同じ出来事を辿っているにも関わらず、自分自身や他人の人物像や、強調される会話と行動が大きく異なっていたのが印象的。ジャンとル・グリの歪んだ認知の仕方が中でも鮮明に記憶に残る。自分を名誉と正義を重んじる真っ当な人間だと見ているジャンと、凌辱はル・グリとマルグリッド双方の激情が生んだものだと見ているル・グリの見方はマルグリッドの視点では擦りもしていなかった。この構図に有害な男性らしさに取り憑かれた男性やその害を受ける女性の姿があるのでは。真っ当で強くあることこそ理想の在り方という価値観に囚われ決闘裁判まで行ったジャンはまさにその体現。
これまで決闘裁判は、GoTでジョフリー毒殺をめぐるサーセイとティリオンの裁判で、マウンテンとオベリン・マーテルが戦った裁判という程度の認識だった。それ故、決闘裁判が、事実や真実がどうであれ語ることが正しい者は神によって守られ、神の御心が正義を下すという理屈の下で行われるものだと初めて知った。ぶっ飛び理論ではあるが、面白い理屈でもあって好き。
yuta

yuta