Kaji

カード・カウンターのKajiのネタバレレビュー・内容・結末

カード・カウンター(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます



オスカー・アイザックが過去を抱えて苦行僧のように生活から愛着を排除しているカードカウントギャンブラーを演じ、内面の見えにくさと分かりやすさが混ざり合うキャラクターが贖罪と清算へ向かう良い話でした。

不安定な業界で質素に安定していたビルが出会いによって均衡を壊し、解放に向かう姿は全くすがすがしくないけど出会いが彼を助けたのだと素直に思える。

目の前のカードと見えていないカードを正確に推察して手の内を読むカードギャンブルは、詳らかになっていないカードが鍵。しかし勝敗は持っているカードに依る。最後の大勝負で離席してカークの敵討ちに行くことでも、ビルはギャンブルの勝ち負けには一才興味がなかったことがわかる。
勝敗を決めることは重要ではないと言い切って自己解放へ向かうシュレイダー節が濃ゆい。既存のギャンブル映画ならあそこからじゃんじゃか盛り上げるのにね。


アメリカが国をあげて根拠なく戦争や拷問をしていた罪を被った元軍人という背景には直球の社会批判が入っているし上官に従ったために罪に問われ裁かれた者の方が罪の重さを理解し、責任を取らない奴が自己責任論を持ち出して、軽薄で世界が見えていない奴が愛国者のふりをしている。
あの1ミリも国の加害を知らないUSAコールったらない。
シュレイダー監督の厭世観と洞察力が冴えてます。
しっかりケリをつけるラストはカタルシスがじわっと流れ込みますが、そこがラストではなく面会がラストシーンとなる終わりの綺麗さには脱帽というか、派手で明るいカジノにいたのにライトアップした公園で「過去を問わない」と言われたことがビルを変えたんだな意外とロマンティックなとこと繋がって、「魂のゆくえ」とも違うような一緒のような笑

途中、カークにカードを捌くシーンで復讐に乗るのかと思ったけどあくまでカークには親切にしてたので「良い話じゃん」と思っていたら、あのねじ曲がったラスト。
カジノを渡り、定住を拒否していたビルにとって刑罰を遂行する刑務所が出たいところになったのはあの時だったのではないでしょうか。

それにしてもオスカー・アイザックの色気ものすごかった。。。
Kaji

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