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LAMB/ラムのYKのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ホラーというほど怖くなく、問題作と呼ばれるほど過激でもなかった。変な映画であることは間違いないが、演出的な面ではむしろ誠実で、丁寧な映画だと思う。序盤は羊を育てる男と女の淡々とした日常。この2人の関係はなんなんだ、夫婦か、でも子どもはいなくて…と観ていく。はじめは妊娠や不妊にまつわる話か?とも思った。

日常淡々パートが終わると、つぎは「アダ」誕生パートがはじまる。待望の我が子というようにアダを育てる2人のもとへ、夫の弟ペートゥルが訪ねてくる。ペートゥルはアダに奇妙な目を向け、自身の行動に疑問を感じない兄夫婦を見て唖然とする。ここで初めて、観客はペートゥルという第三者の存在に視点が落ち着く。しかし、アダ誕生パートで我々は徐々に気づきはじめるだろう。「アダが思ったより可愛い」と。つぶらな瞳と、よちよち歩き。ブルーのニットを着てタンポポ畑にたたずむ姿には、母性をくすぐる萌えと癒しの要素がある。そうなると、今度はアダに感情移入したくなる。映画はアダ誕生パートから自我めばえパートに移行し、アダのアイデンティティを問うような内容に。アダの胸の内に想いを馳せながら、彼女の幸せを願わずにはいられなくなる。

そんな感じで、映画はいくつかの段階を踏みながら、観客の視点をその都度変化させ物語の行く末をあれこれ想像させる。しかし、最後はそんな想像など及ばない展開で、良いのか悪いのかは別として衝撃のラストを迎える。
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