ヒムロ

LAMB/ラムのヒムロのネタバレレビュー・内容・結末

LAMB/ラム(2021年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

アイスランドの山間部に羊を飼いながら生活している夫婦、イングヴァルとマリア。
ある日、羊の出産を手伝っていると「羊ではない何か」が産まれる。
夫婦は「何か」をアダと名付けて育て始める。


ホラーというジャンルにされているのが納得いかない内容だった。
ミステリースリラーはまぁ分かるがドラマと言うべき心に突き刺さる様な内容だった。

ちょっと何を言ってもネタバレになりそうというか…自分自身があらすじすら読まずに「なんかヤギが出てくる話なのかな」ぐらいの知識のなさで見たので面白かった部分が大きいかなとも思う。
だからもうこんなもんもし視聴前に見ているんだとしたら今すぐやめて見て欲しい。

自分には珍しくネタバレにしたのでもうここからはネタバレを書く。




まず3章構成が見事。
映画に何章とかいる?って思ったが1章のラストでドギツイオチを持ってこられて愕然。
なるほどその為の章構成かと思ったら3章の頭にアダの墓参りでまた不意打ちで撃ち抜かれた。

ホラーと称するのであれば母マリアのアダへの執着なのかもしれないが、自分的にはこれをホラーとは片付けられなかった。
どちらかといえば宗教の信仰に近い、救いを求めてすがる物が新しいアダになっているというか、自分が壊れない為の自衛で母羊を殺しているという所だと思うからだ。
自分と家畜の命、比べるまでもない。
そしてその母殺しこそが過去の自分に起きた子を失うという事件と似通った物であるという視点を彼女が持っているのか、そこがホラーとして狂っているか判別する境目だと思うのだが、マリアはペートゥルにその事を指摘されてとんでもなく動揺する。
閉じ込めて、次の日には追い出すが、殺したり暴力的に追い出したりはしない。
そここそがマリアがただ精神的に追い詰められているだけの1人の女性であると言い切れる部分なのではないかなと。

ラストに登場する父親羊と思しき生物はバフォメットなのだろうか。
アダを育てさせた理由はなんなのか。
もしくは奪い返す予定ではなかったのか。
悪魔ならばアダを与えてから全てを奪い、マリアを孤独にするのが目的なのだろうか。
それとも世話をし続けた羊からの贈り物だったアダに執着し、醜くなったマリアへの罰を執行しにきた存在なのか。

個人的には理由など必要ない派なのだが、やはりエゴイズムへの罰だろうか。

ともかくアイスランドの絶景の中、少人数かつほとんどセリフもなく進行していく中で飽きさせないストーリー作りと見事すぎるカメラワーク。
全てに惹きつけられる美しさがあった。
ヒムロ

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