このレビューはネタバレを含みます
本編前の予告で「鬼太郎」の新作をやっていて次は結構ホラーテイストにやるんだな〜って思っていたら「デジモン」の方がホラーだった。生々しい虐待描写とか、眼球ウッコモンとか、無表情で振り向くウッコモンとか、眼球くり抜きウッコモンとか、ドロドロに溶けるウッコモンとか子供が観たら間違いなくトラウマだが、作中設定の2012年どころか2023年になってしまった今、映画館に集まった選ばれし子供たちもみんないい歳なので大丈夫か。大丈夫なのか？
かなりこじんまりとした話で映画というよりは気合いの入ったOVAみたいな内容だなと思ったが、最低品質のOVAを7連続で映画館で垂れ流した実績を持つIPなので、気合いの入ったOVA、むしろ大歓迎である。ただでさえ「無印」の後の蛇足扱いを受けることが多かった「02」の続編だ。スタッフも蛇足上等で作っている気がする。それにしたって「大人になったらパートナーデジモンと別れなければならない」とぶち上げた「LAST EVOLUTION」のラストにほぼノータッチなのはどうかと思ったけど。あれがデジモン新作としては奇跡的と言えるほど面白かった上に本作とスタッフが一緒なだけに。
作画は綺麗だし、こじんまりだけど起承転結ちゃんとしてるし、それだけでデジモンアニメとしては優秀…なのだが、その反面歪な面も大きく出た映画である。今までのシリーズ的に今更「最初の選ばれし子ども」が出てくるのは無理がない？とか、上記の通り「LAST EVOLUTION」の結末とバッティングしかねない話を思い切りやっているとか。細かく見出すと過去作と矛盾してない？ってポイントも結構多いし。アーマゲモン出てくるまでシンジ君…じゃなかった、ルイが他のデジモンの存在に気づかなかったって前提も無理があるような。
それでも、今回のシンジ君…じゃなかった、ルイと、ルイの「友達が欲しい」という願いを曲解してしまったウッコモンの悲しいすれ違いを通して描かれるのは、沢山のデジモンが現実世界に表象する、そして半ば無理やり人間とパートナー関係を結ばされるというもの。単純なストーリーとして見たら、正直なんじゃそれな展開である。それってそんなに驚異的か？と。しかし、これが「デジモン(の作り手)」と「(デジモンファンの)人間」のメタファーだと深読みすると…というか、思い切り深読みさせようとしてる。
つまり、アニメもゲームもカードも過剰供給(そしてその割に面白い！と手放しで褒められるものは殆どなく、世間一般的にウケたものはゼロに等しい)してくる公式に「もう勘弁してくれ！そんなの望んでないよ！」というファンの心の叫びを、シンジ君…じゃないけどもういいや、シンジ君が代弁してくれているわけでしょ。でも「僕は君の為だと思ったんだ…😞」というのが公式の思いだと。そして、「僕たちもっと話し合えば良かったんだね…」と。ここ10年程のデジモン界隈の出来事を見事にメタフィクション化している。
まあね！絶滅危惧種のデジモンファン的には、作るなとは言ってないよ！作るなら「ちゃんと」作ってよ！とCVシンジ君で叫びたくなるというかそれが全てだったりしますよ。でもこの悲しきすれ違いをそのまま映画にしようとして、(デジモンシリーズの続編として正しい姿勢かはさておき)単体のドラマとしてちゃんと見応えあるものを作ってきた事実は面白い。
そう、ドラマとして面白かった。キッズアニメとしてはNGに近い虐待描写にホラー描写…でもその必然性はちゃんとあった。アクションがほぼない、パイルドラモンなんてほぼタクシー状態なのにそこまで不満は覚えなかったのは、静かなドラマ部分がちゃんとしているからで。
その根幹を成すのが緒方恵美と釘宮理恵の演技力にあるのは間違いないのだが…まあ流石に、どうしてもさ、シンジ君ではあったよ！「おかしいよ、こんなのおかしいよ！」「僕を裏切ったな！」ってまんまそんな感じだったからな。ウッコモンは祈本里香に見えてくるし。
02組は無印組と比べて出番に恵まれなさすぎなので、そんな彼らがちゃんとメインなだけで安心する。例えシンジ君の存在感がデカすぎて霞み気味でも安心する。あー大輔こんな感じでウザかったなとか…出番少なすぎで、ちょっと記憶曖昧なんだけど。しかし改めて観ると、京って選ばれし子供たちの中で一番美人なんだ。小学生の頃はファッションセンスがぶっ飛んでいたので気づかなかったけど。賢ちゃんとの絡みが多くて気ぶったわ。
そんな感じで、王道のアニメ映画では全くなかったんだけど、でも個人的には意外と楽しめたという…でもファンとの対話を望む前に、初代シリーズディレクターとの場外乱闘が表に出るとか、そういうとこから直していこうね公式…。嫌いな人もいるだろうけど、やりたい放題してる田口監督結構好きなので、次はR-15版「デジモンテイマーズ」とか作ってくれないかな。多分面白い。
