韓国済州島で軍部がおこした住民無差別殺戮(4.3事件)を間近で目撃したオモニ(監督の母)。彼女が語るエピソードのむごさ。
以降、韓国軍部への不信感を募らせ、オモニとアボジ(監督の父)は息子3人を北朝鮮へと移住させる。
(そうか北朝鮮が夢の国と評された時代があったのか。)
時代に翻弄され、韓国、北朝鮮、日本をまたいだオモニの人生。彼女はいまアルツハイマーによりその壮絶な人生の記憶を忘れ去ろうとしていた。
その記憶をすくい取り、記録に留めようとするのが監督であり娘のヨンヒ。
アルツハイマーを患う前の凛としたオモニの表情、徐々に物忘れをするようになるオモニ、いるはずのない人(なくなった夫や弟)がいる認知症になったオモニの世界。
混乱の中にいるオモニに優しく寄り添うヨンヒ。
歴史の証人であるオモニが認知症によって過去の壮絶な経験を忘れていく。
ヨンヒが「つらいことは忘れたほうが楽やもんね」とオモニに言った時、ああそうかと思った。
『忘却』って悪いことだけでは決してないなと。オモニにとってその作業は重要な意味をもつのかもしれない。