ドイツで暮らす母親を訪ねる旅に出たギリシャの元飛び込み選手は、万引き常習者のコミュ強男と相乗りすることに。ギリシャ〜イタリア〜ドイツの風景を楽しめる、軽快なロードムービー。
感情表現や起承転結などはあえて曖昧に、「なんとなく」で進むストーリーがシュールで心地よい。テンポもさくさく。とくに前半は最小限の情報で主人公の状況を説明しており、巧みだった。
顔を隠した状態での賃金受け渡しによってアイデンティティの感じられない仕事であることを示したり、荒れ果てたプールのイスに座るシーンに漂う孤独感など、ショットも雄弁。なにより各地の風景が美しい。
飛び込みが象徴するものをもうすこしストーリーに組み込んだり、ラストのキレをよくして欲しい気もしたが、総合的にかなり楽しめた。同性愛を過度に強調して特別扱いしないところも好印象。
