金魚鉢

愛なのにの金魚鉢のレビュー・感想・評価

愛なのに(2021年製作の映画)
3.8
「愛なのに」というタイトル通り、第三者からは理解されないような愛の形を群像劇タッチで生々しく濃く描いた作品。

自分が経験していないと描けないような繊細な切り口から愛に対する価値観をあれだけのバリエーション表現出来るのは本当に圧巻。
多田を軸とした多様な背景の人物の交差が時に観客の笑いを誘い、時に残酷なものに姿を変えて突きつけられる感覚や、現実味のある悩みから生まれる自然なきっかけ作りに引き込まれ最後まで冷めることなく見続けられました。真っ直ぐな好意を自分に伝え続けてくる女子高生と婚約者の裏切りを入り口として変わり果てた昔好きだった相手との間で主人公の価値観が揺れ、『誰のためにとった行動か』よりも先に『好きだから出来ない、どうでもいいから出来る』という共通の感情があると多田が身を持って体感していく様子に何だか胸が痛くなった。最終的にはトラブルメーカーであるものの、裏がなく常に表を全力でぶつけて諦める引き際まで宣言する潔さや芯を持った岬の純粋さが輝いて見えた。
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