JunichiOoya

笑いのカイブツのJunichiOoyaのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.0
びっくりするほど古(くさ)い映画。半世紀以上前、中学から高校へというころこんな「青春映画」をよく見た気がする。

主人公はひたすら愚かで、やたら自死を試すのだがそもそも真っ当に死ぬ気はないし(ちょうど訳あって太宰の『東京八景』を読み直してるところなんで思わず笑ってしまった)、いくら寝不足で消耗しても胸板は結構厚いままで、やつれの気配もない。
だからもちろんまるで感情移入できない。

でも、そもそも主人公はこの青年ではなくて、彼が魅入られた「笑いのカイブツ」っていう「観念」ということなのでしょう。
で、そのカイブツというか神様というかから一向に微笑みかけられない人の話(コメディ)として楽しく見た。

この青年、やたら熱意はあるけどまるで才能が無い。オードリーの若林さんへのやたらの忖度なのか太賀さんはえらい良い人だし、菅田さんの居酒屋よしよしシーンも、まるで人情歌舞伎みたいな大芝居で、ちょっと予定調和が過ぎないかしらねえ。(保護司に給与明細云々はいい台詞でしたが)

原作はこの青年の身の上話だそうなので、自身の非力をこんな具合に披露する、その根性はある意味見上げたもので感心しました。

結局、私にとってはこの映画、片岡礼子さんに尽きるのでしょうね。彼女の鼻と耳にはいつも恋してしまうのだけれど、今回はとりわけ耳が素敵でした。

その一方で松本穂香さんは残念なお芝居。もう少し演技ができる役どころだと良かったのに…。
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