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女神の継承のoimoのレビュー・感想・評価

女神の継承(2021年製作の映画)
4.0
タイのとある村の祈祷師一族を追うモキュメンタリーホラー。


劇場鑑賞を経ての2回目、初テレビ鑑賞。
この作品はテレビ鑑賞が大優勝でした…!

ドキュメンタリー風に作られた作品なので完全非日常空間な劇場大画面で観るより自宅のテレビで観る方が”ドキュメンタリー見てる感”に浸れて画面越しの出来事をより身近に感じられる。
そして劇場鑑賞時に”ホラーとは言えなんとも画面が地味だな〜”と感じていた彩度低めの映像。これがめちゃくちゃテレビ映えする!フィルター掛けなかったら多分ただの綺麗で長閑な田舎の風景なのに、この画質のおかげで日常パートの冒頭から既になんとも言えない不気味さに後頭部の下の方がゾワゾワしてくる。
一緒に恐怖を乗り越えてくれる他の観客が同じ空間内に居ないのもまた恐怖に拍車をかけてくれるので、本作は夜中の自宅テレビ鑑賞が絶対にオススメです。


ただ私は、飲みながら観たのがいけなかったのか、手ブレ映像のせいか怖過ぎか…盛りでも比喩でもなく終盤で限界に達し、吐いて翌日半日寝込みました。POV作品苦手な人は要注意…!





↓↓↓以下ネタバレあり↓↓↓





なんかもう本当に色々と無理でした。
怖過ぎた。


ホラー映画って、凄く怖い部分(主に不意打ち大音響で脅かしてくるジャンプスケア部分)が何ヶ所かあって、謎解きターンを経て謎が無くなると怖さも無くなり、クライマックスはただのアクションになるかギャグになって、家族愛か恋愛のほっこりに落ち着く。というテンプレを綺麗に踏襲した作品ばっかりで何か逆に安心感を持って観てる部分があったんだけど、『コンジアム』や『哭声』や『呪詛』なんかの比較的最近作られたアジアンホラーはそういうお約束を良くも悪くも突き破っていて、ホラーというジャンル自体を新しい次元に引っ張って行ってくれるんじゃないかとワクワクさせられます。
今作もまさに、そんな突き破り作品でした。

ミンの豹変ぶりや夜中の奇行がとにかくめちゃくちゃに怖いんだけど、そういう五感で感じられる直接的な怖さよりも、最後の最後のニムの告白シーンにこそこの作品が本当に描きたかった太刀打ち不可能な怖さ、というか嫌さが、渾身の力で詰め込まれてるんじゃないだろうか。
私は人間が考えだしたあらゆる宗教(※)に対して懐疑的な方の人間なので、”信仰心”というものに関して本質的な部分までは理解が及ばないんだけど、『自分が心から信じていた(或いは信じたいと思っていた)ものが実はハリボテだった』ことに一番縋りたい時に気付くという恐怖というか絶望感は、宗教関係無くあらゆる場面で誰でも経験し得る怖さなのかな、とも思う。
(※本作ではピーと総称されるその土地固有の精霊を祀っている、ということだったのでキリスト教や仏教なんかの所謂”宗教”とはまた少し違うんだろうけど)

土着信仰というひとつのオブジェクトで二種類の怖さを楽しめる一石二鳥的恐怖体験に最後の最後で打ちのめされるこの感覚。今まで他のホラー映画ではあまり感じること無かった気がする。

ホラー映画の顔したラブストーリーとかそういうのも全然大好きだけど、たまにはこういう本気のやつも欲しい。
けどたまにで良いよ…。2年に一本ペースで良いです、ここまで本気過ぎるホラーは…。












(鑑賞後4日経っても余韻が抜けないのでこれはアレだ!撮影中の仲良しオフショか何か見て中和したら大丈夫になる筈!と画像検索したらガンギマリしてる時のミンばっかり出てきて更に死にました😇)
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