Yukinobe

THE FIRST SLAM DUNKのYukinobeのレビュー・感想・評価

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
3.8
色々あって全然映画が観られない&感想書いてない期間が半年ほどありましたが、またちまちまメモしていきますー。

『SLAM DUNK』は連載当時コミックを買っていたくらい好きな漫画で、多分生きる上で何らかの影響を受けている作品です。映画化、それも原作者である井上雄彦先生自ら脚本・監督を務めると聞いた時は、それはもうテンションあがったものでした。
が、前情報が一切出ず、予告の映像もなーんか微妙、声優さんも変更されちゃったし、いっそあの美しい想い出はそのままでいいんじゃないかと思っていたところ、映画を観た人たちの評判が余りにもいいので、観に行くことにしました。

結論から言うと、これは確かに凄い作品ですし、熱くなれる、泣ける作品です!
ただし、その熱さや泣ける要素の多くは、ワールドカップやオリンピックで熱い試合を観た時に感じる、内側から湧き出る感情とほぼ同じなんだと思いました。つまるところ、単純に湘北と山王の試合に飲み込まれてしまっているのだと思います。

試合の熱さ、を差し引いて考えると、ちょっと雑だなと感じるところがちらほらあったんですね。特に感じたのが、視点の定まらなさです。
物語はリョーちんこと宮城リョータを主人公とし、山王戦、バスケットにかける想いを試合に差し込む形で語る形式でした。試合の的確な部分に挟み込むことで、試合をより劇的に見せていると思います。
ただ、元々原作漫画は桜木花道が主人公ですし、漫画の山王戦では湘北のレギュラー陣はじめ、山王チームにもそれぞれの背景などを語るパートがありました。つまるところ、割と群像劇的に描かれていたんだと思います。そして、群像劇的に描かれていた部分が試合の進行にも深く関わっている部分があったので、試合を描く上でキャラの背景を描かざるを得ない部分が少なからず出てくることになります。

しかし、今回の映画は宮城リョータ主役であり、宮城リョータの視点で語られますが、所々に他のキャラの視点が挟まります。その挟み方が雑なのです。尺を多く割くわけにはいかないけど、最低限説明はしなくてはいけない。そんな制作側の都合が透けて見える挟み方は、正直流れを壊していたと思います。
その最たる例は、沢北の神社参りでしょう。原作にもないこのシーンを追加した理由は、映画を見れば一目瞭然です。しかし、ここで挟む必要性はあったでしょうか・・・もちろん理由はわかりますが、にしても突然視点がブレるのがどうしても気になりました。

でも、この映画を見ると引き込まれる・・・!
それはなぜか・・・、それが最初の結論、これは試合の面白さでとことん引っ張った作品なんです。
だからこそ、漫画だとあった実際に試合で流れている時間を無視した会話やギャグ、心理描写は殆ど排除し、あくまでリアルタイムに近い、実際の試合を観戦している感覚を徹底的に追求したんだと思います。

別に“映画はこうあるべきだ”と言いたいわけじゃないし、これで完成度の高い傑作になっているのは否定しません。実際めっちゃ面白かったし、熱かったし、最後はウルッとしましたし。
ただ、これは構造や仕掛け方の巧みさがあるわけであって、そこを単純に「良かった!」とか「傑作だ!」とするのはちょっと違う気がするなぁ・・・と思った次第です。
まあ、エンタメなんで楽しめれば何でもいいんですけどね。
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