持て余す

THE FIRST SLAM DUNKの持て余すのネタバレレビュー・内容・結末

THE FIRST SLAM DUNK(2022年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

大傑作。

原作は通して何十回も読んだ。ひょっとするとそれ以上かもしれない。実際部活でバスケはやったけど、下手くそだったし、人数が集まらなくて練習にも行かなくなった。それでも、『スラムダンク』は好きだった。1番好きかと聞かれると自信はないけれど、古いスポコン漫画とは一線を画した新しいスポーツ漫画にひどく興奮した。

『ブザービーター』も『バガボンド』も『リアル』も読んだ。とても面白かったけど、『スラムダンク』ほどは興奮しなかった。あの漫画は特別だったんだと思う。

テレビアニメには当時がっかりした口だ。主題歌に流行りのbeing系歌手を起用して、かなり人気はあったようだけど、あれは自分が好きな『スラムダンク』とは別物だった。青みがかった変な体育館の壁や、ドリブルすると頻繁に地平線の見えるコートにも「うえっ」てなった。

それから20年以上の時が経ち、『バガボンド』も『リアル』も完結させないままの井上雄彦が、自ら『スラムダンク』のアニメーション映画の監督をやると知ったけど、正直なところそれほど関心を持てなかった。時が経ち過ぎていたこともあるけれど、かつてのテレビアニメ版に対してがっかりした印象が強かったからだと思う。

ところが、封切り前になんだかネットがザワついている。曰く「テレビ版と声優を替えるなんてひどい」、曰く「事前情報が少な過ぎる」──などの否定的な意見だ。テレビ版にそこまで思い入れがある人が多いのかと衝撃を受けたけど、『リアル』の中(不確か)で井上雄彦自身が否定的なイジり方をしていたから、「そりゃ替えるだろうよ」くらいに思ってたし、近頃の映画はアニメに限らず事前情報を出し過ぎると思っているから、それは否定要素にならない。

ただ、封切りと同時に観に行くほどの熱意も時間もなかった。そうこうしているうちに、ポツポツ流れてきたネット上の評を読むとなにやらみんなひどく興奮している。半信半疑のところはあるものの、久し振りに劇場へ──。

画がとてもキレイ。

少しCGくささはあるけれど、原作の湘北バスケ部のみんながあのまま動いている。なんだかとても嬉しい。スタメン5人のそれぞれの見せ場がとても滑らかにスピーディに描かれて──、

この開始10分ほどで涙が出てきました。

結構動揺しました。「え? まだ始まったばかりなのに」とも思ったし、「このペースで感動してたら最後まで保たん」とも思って、努めて冷静を装いながら、鑑賞。

前半戦がほぼカットというのは尺の都合もあるのだろうし、「展開知ってますよね」という超有名作(累計1億2000万部超だそうだ)の強みだと思う。宮城リョータの生い立ちを差し挟みながら、物語はあの後半戦を描いていく。

よく知っている試合の合間に、知らないリョータの家族の物語が入ることで、奥行きが出る。彼は体格に恵まれた赤木や流川や花道とは違うし、中学MVPという看板を持っている三井とも違い、最も読者に近い存在だったと思う。リョータやソータの過去を知ることで、感情移入が加速する。

だから、よく知っている試合なのに改めてドキドキしたし、あの無音のシーンからの花道と流川のタッチに新鮮な気持ちで感動することができた。

ほんとにすごくよかった。
大傑作です。
持て余す

持て余す