filmoo

都会のアリス 2K レストア版のfilmooのネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

15年ぶりくらい。大学時代に観て以来。
確かヴィムヴェンダースで初めて観た作品。
当時地元のレンタル屋に置かれていたヴェンダース作品の中で最も古い物だったと思う。カンヌやアカデミー賞の受賞作が分かりやすく並べられていたり、DVD全盛期でもホドロフスキー『エルトポ』『ホーリーマウンテン』『サンタサングレ』のVHSを置いていたりと趣味の良いレンタル屋だった。飲み会の帰りに何を借りるか迷って30分とか1時間とかうろうろするのも好きだった。
主人公の男と少女が何かを探していたことと、チャックベリーの"メンフィス・テネシー"だけは憶えていたけど、記憶の中の少女はもう少し大人っぽい見た目だったので、チャックベリーが出てくるまで2回目だという確信が持てなかった。小学生から見る中学生の姿が成人してから見る中学生よりも老けて見えるように、20歳の頃に見たアリスのほうが30代になってから見るアリスよりも大人っぽく感じたのかもしれない。少女の性格が大人びていることもプラスして大人っぽい見た目で記憶されていたのだと思う。自分自身は未だに大学生気分なのにね。
初めて観た時は、抽象的な話が全然分からなかったり登場人物の心情もよく分からず、つまらなく感じていたと今なら分かる。当時は面白さを理解できないことが恥ずかしくて、つまらないと感じることを拒否していた気がする。
今回は面白かった。
ニューヨークの恋人だかセフレだかの話が良かった。
ロードムービー3部作と銘打たれたシリーズの1作目だけど、行く先々でフィリップの目に時折り映るアフリカ系の少年、中国系の料理店、チャックベリー、アラブ系の夫婦、イタリア人といった自身のルーツを自国の外に持つ人々の姿は、旅をするフィリップと合わせて人の移動をミクロとマクロで対比させていて面白いと思った。そこに重ねて、どこに行っても居場所の無いアリスのやるせなさがアクセントとしてあり、白黒映画でありながらも鮮やかな映像体験になった。
アリス役のイェラロットレンダーが可愛くて少し後ろめたさを感じた。役のせいもあるだろうけど『緋文字』とは大違いだった。
音楽はCANらしいけど暗いギターの同じBGMが何度も流れて手を抜いているように感じた。
音楽のマイナスが無ければ3.5点を付けていたと思う。
小津安二郎『長屋紳士録』と性別を入れ替えて似たような状況に主人公が陥るという、直接的な影響関係のある作品を連続して体験できたのは偶然でもあり必然でもあるだろうけど嬉しかった。
ザシネマメンバーズがサイトリニューアル時に最高画質でも540pまでしか選択できなくなりずっと不満だったのだけど、いつの間にか1080pで再生できるようになっていた。
filmoo

filmoo