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悪は存在しないのfilmooのネタバレレビュー・内容・結末

悪は存在しない(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

濱竜2本目。
上から下へと流れた結果どうなるか。
序盤、タクミやロン毛のうどん屋の話し方が棒読みな感じで演技が下手だと思ってしまったが意図的な演出なのかもしれない。『ドライブマイカー』にも似たような雰囲気はあったのだけど原作が村上春樹だという意識が働いていたおかげで棒読みっぽいセリフが上手くマッチしていたのだなと今作を観たことで気付いた。
説明会のシーンが面白くて、そこからずっと面白さもしくは気持ち良さを感じながら観ていた。
うどん屋の「温まるって、味じゃないですよね」で場内に笑いが起きて自分も笑い声に釣られて少しだけ笑ってしまったのだけど、飲み食いの感想として「温まる」を使うのは「心が温まる」という意味だと思うし、zoom会議や車内のシーンを経てタカハシとマユズミにも多少は感情移入しているとすれば声を出して笑うようなシーンではない気がする。
全体的にタカハシが短絡的で薄っぺらくマユズミのほうが思慮深いような描かれ方をしていたけど、上からの流れに対する抗い方には大した違いを感じなかったので、できれば2人の結末は揃えてほしかった。
ラストは説明会の時にセンセイが語っていたことがしっかり再現されることになったわけだけど、タイトルについては「(全ては物事が連鎖した結果なのだとすれば)悪は存在しない」というような意味だと感じた。
結末の解釈を観客に委ねるような映画はあまり好きではないのだけど、今作に関しては各々が解釈を試みることで、空想の物語ではなく自分たちの世界と地続きの場所で起こった事件のような実感が強くなる仕掛けのような気がして好意的に捉えられた。
リアルな部分とか作品のテーマに関しては『ドライブマイカー』より好きだけど音楽と映像の融合した気持ち良さは終盤くらいであまり感じず。そもそもBGMの無いシーンも多かった。音楽の気持ち良さを出すほど現実感から遠ざかってしまうからかも。その辺りの不満は『GIFT』が解消してくれるのかもしれないし観てみたくなった。

追記
この方のレビューが面白かった。あと行き場を失ったシカをタバコの煙に重ねている人も居てなるほどと思った。
https://filmarks.com/movies/111406/reviews/174297800
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