Blake1757

パリ、テキサス 2K レストア版のBlake1757のレビュー・感想・評価

3.5
「午前十時の映画祭」で鑑賞。
僕にとってのヴェンダースは、やはり『ベルリン~』なのだが(近作では『PERFECT DAYS』もよかった)、これももちろん、悪くはない。
いわゆる三幕構成といってよいと思うが、一幕目の、何も明かされない「帰る旅」、徐々にいろいろなことが分かってくる二幕目の「回復または再生」、そして三幕目の「探す旅」といった構成。
一幕目と三幕目は傑作の域なのだが、二幕目が、僕には少し急ぎすぎたような印象をもった。別の言い方をすれば、いわゆるプロットのアークとしては、ヴェンダースが意図的に抑えたのだろうとは思うし、あそこをベタベタに盛り上げられても、それはそれで困惑したとは思うのだが。
この作品の圧巻は、やはり三幕目の「再会」のシークエンスだろう。追走のサスペンスからの、凝った密室の設定とキャメラワークには、否応なく胸を打たれた。
あとなんか、トランシーバーのやりとりがよかったなあ。モバイルフォンが普及した現代ではもはや描けないシーン。
それと、やっぱりライ・クーダーの音楽が良い。被せ方としては感情に合わせての「順目」というか正攻法に過ぎるのだけれど、彼のスライド・ギターの音色があるからこその、絶対的に正しい音楽の使い方だという気がした。
Blake1757

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