EnzoUkai

パリ、テキサス 2K レストア版のEnzoUkaiのレビュー・感想・評価

4.9
折下、本日は『パリ、テキサス』公開40周年記念日だったらしい。
しかも、4Kリマスターがカンヌで上映されるというニュースが入ってきた。

ん???

昨年のヴェンダースレトロスペクティヴで上映されたのは4Kじゃなかったの?

ま、今朝方午前10時の映画祭で見たものは紛れもなく2014年版のリマスターだった。
今日見た映画版は前置きがあった(それには4Kスキャンの2Kレストアみたいなことが書かれてたんだけど)。結局はこのバージョンがレトロスペクティブでは上映されたわけやね。最新のバージョンだと思って、それが午前10時で掛けられてものだと勘違いして、慌てて観に行った次第であります。

ただ、この2014年版はリマスターの中でも出色のリマスターで、リマスター警察を自認する私のお眼鏡に適う数少ない作品の一つ。そう、先日のぼせ上がったタルコフスキーの『ノスタルジア』に匹敵するもの。
『ブレードランナー』や『地獄の黙示録』なんかとも並び立つ。
ただ、それらの作品と大きく異なるのは、我々が観た当時のヴェンダースの作品の画質が悪過ぎたの一言。2014年版を観て、まさしく腰を抜かした。
こんなにも青と赤の発色が良かったのか!とその時初めて気付いた。
ロビーミューラーの狙いはこんなにエッジの効いた原色が踊る画面だったのか!?と驚き呆れた始末。
映画館で観て、ビデオで観て、そしてDVDも購入した。それでも2014年になるまで、こんな色合いの映画だとは思わなかった。

2014年版を観たのはNHKのBS放送。テレビの画面だからほぼないBlu-rayのレベルだと思う。だから余計にその画質の凄まじさに圧倒されたわけだ。
今日、実際にスクリーンで観てみたら程よい発色の落ち着きを感じた(劇場がかなり年季の入ったシネコンでいつも少し線がボヤけてると思ってるスクリーン)。特にマジックアワーの色合いはノスタルジックな気分にさせられ、切ない程だった。それは、やはり40年前に観たあの感覚が蘇る感じだ。
それはそれで、少し疑問に思ってることでもある。
ヴェンダースは『ベルリン・天使の詩』のリマスターも大幅に手を加えた。リマスターに際して、オリジナルの風合いに手を入れてるところがある。もしかして、彼にとってリマスターそのものは、作り直しの過程でもありそうな気がする。
やはり、オリジナルの風合いはアレが正しく、今我々が観てるリマスターは改めて今の時代にヴェンダースがアップデートしたものなのかもしれない。
こうなってくると、また新たに送り込まれてくるホンモノの4Kリマスターが楽しみだ。

(本編のこと何も書いてないw)
EnzoUkai

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