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アステロイド・シティのNAOZYのレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.9
ウェス・アンダーソン監督の最新作「アステロイドシティ」を観ました。
1950年代のアメリカ南部の砂漠の町を舞台にしたお話。画面はイラストみたいに鮮やかな色彩が印象的。
出演者も豪華でスカーレット・ヨハンソン、トム・ハンクス、エドワード・ノートン、エイドリアン・ブロディなど。マーゴット・ロビーもちょい役で出ます。
今回は構成がちょっと変わってます。劇作家の創作現場のパートと作家が作り出すテレビ番組「アステロイドシティ」のパートに別れていて、役者は表舞台と舞台裏を行ったり来たりする。
観客としてはフィクションとしてのアステロイドシティのドラマに集中したいところなのだが、舞台裏では物語を作り出す作家と役者の苦悩を描くというメタ構造になっている。

1950年代は白黒テレビが一般に普及している時代であり、冷戦下で米ソ核兵器開発競争をしている頃である。アステロイドシティの近くでは核実験をしているらしく爆音と共にキノコ雲がたち昇る。市民は建物が揺れても動揺する様子もなく、「また核実験やってるよー」という感じ。
ここらへんは日本人とは核兵器への認識がだいぶ違う。
スタンリー・キューブリック監督が核兵器に対する危機感から「博士の異常な愛情」を作ったように、現代でも核の脅威は続いているわけで、同時期にクリストファー・ノーラン監督の「オッペンハイマー」が上映されていることから、これがたまたまなのかシンクロニシティなのかわからないが核兵器に対する再認識をさせようとしているのではないか?と思ってしまう。
ただこの作品はウェス・アンダーソン流の肩の力を抜いた感じの世界観なので、そんなにメッセージ性は強くないのでご安心を。
1950年代の空気をポップなビジュアルで描くコメディとして楽しめると思います。
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