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アステロイド・シティのtubure400のレビュー・感想・評価

アステロイド・シティ(2023年製作の映画)
3.5
『ラシュモア』とか『ロイヤル・テネンバウムズ』が人生ベストムービーで、『ファンタスティックMr.fox』を映画館で見たのが人生ベスト思い出の一つである自分にとって、『ムーンライズ・キングダム』以降のウェス・アンダーソン映画には若干物足らなさがある。

『アステロイド・シティ』も、あいも変わらず、小洒落た仕掛けとか、魅力的なキャラクター、ウィットに富んでいるんだけども、いつも以上に対象からの遠さと言うか、デタッチメントの感覚がある気がした。感情の表出に乏しいという意味で、ハードボイルドな気がした。途中でスカーレット・ヨハンソンが無表情に語る通り、「心に深い傷を負った登場人物達が、それでも不器用に繋がろうとする」という主題は変わらないような気がするものの、より作り物っぽさがある。

所々『君たちはどう生きるか』を思い出したりした。あの映画が、年老いたパヤオが、こんな時代において、映画を作り続けることの意味について思い悩むような感触があるような気がしたけれども、『アステロイド・シティ』からは、「こんな時代」から隔絶されて、箱庭宇宙作りに勤しむ壮年のマエストロ感がある。登場人物が、その箱庭宇宙から一瞬離脱して、『劇全体の意味』を問うシーンがなんとはなしに感動的だった。
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