早見沙織信者

余命10年の早見沙織信者のレビュー・感想・評価

余命10年(2022年製作の映画)
2.8
 ほとんどのシーンで照明に気を遣っていないように見える。ラスト付近の黒木華は良かった。

 まあ泣かせるための映画として、機能性は高い作品なのかもしれない。劇場、みんな泣いてたし。でも音楽がうるさい点はまだしもだが、暗い画面で、坂口健太郎も小松菜奈も暗い顔でボソボソ喋る、押し出しの弱いキャラクターだったりするので、いくら病人の映画だからといってこんなに精彩を欠いた演出することないじゃないか、と思ってしまった。お調子者・山田裕貴がいなかったらほとんど全編お通夜ですよ。あと、登場人物が泣きすぎ。
 小松菜奈が表情に滲ませる諦観には大いに納得した。

 どうかな、と思ったのは最後に「ありえたかもしれない時間」を映像で見せてしまう点で、これは、たいへん慎ましさを欠く演出だと思う。その直後のクロスカッティングは『ヤクザと家族』のラスト同様に冴えないし、病室での指の演出も、あるいはビデオカメラのくだりも、全部生煮えの状態で目の前に出された感じで、大変もどかしい。